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2017年7月15日 (土)

丸谷才一「居心地のよい病院」『文藝春秋』1998年4月号 文藝春秋 1998年3月10日発売

昨日読んだ雑誌記事。
丸谷才一「居心地のよい病院」『文藝春秋』1998年4月号 文藝春秋 1998年3月10日発売。
https://bookmeter.com/books/12053236
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/763
「去年の十一月、手術を受けた。なんと病院食で痛風になってしまった」
丸谷才一・湯川豊『文学のレッスン(新潮選書)』新潮社 2017.4 湯川豊「最晩年の十年」で紹介されていた、丸谷才一「居心地のよい病院」p.262-266 だけ読みました。
単行本未収録な文章で、1925年8月27日生まれ72歳の丸谷才一さんが1997年11月に九段坂病院整形外科で脊柱管狭窄症の手術を受けるため入院したことについてのエッセイですけど、闘病記ではありません。
「実を言ふと、この年まで病気らしい病気をしたことがなく、生まれてはじめての本格的な大病である。となれば、いくら暢気なわたしでも多少はものを考へる。じつと思案して立てた方針は、とにかくこの初体験をおもしろがることにしようといふのだつたが、さいはひこれは貫徹できた。」p.262
「11月10日月曜日の手術はあつけなくすんだ。といふよりも、いつ病室を出たのかさへ覚えてゐないし、気がついたときには病室のベッドの上で、どこか痛いところはないかと質問されてゐた。
それから土曜日の夜まではまつたく問題はなかつた。土曜の朝の回診で、たぶん月曜には起きあがつていいことになると言はれ、嬉しさのあまり、夕食のあとで、両足をそつと動かしてみた。ところが、驚いたことに左足の親指が痛い。動かすと痛いので、じつとしてゐる分には何ともない。
わたしはまづ痛風かな? と疑つた。人間ドックにはいるたびに尿酸値が高いと言はれてゐたのだから、これは当然の反応である。しかし、すぐに、まさかそんなはずはないと思ひ直した。
手術前の入院期間も入れて三週間も病院の食事を食べ、それ以外のものは口にせず、つまり美食を断ち、そしてもちろん禁酒してゐたといふことである。痛風はうまいものをうんと食べて酒をしたたか飲んだせい、といふ病理学は、耳にたこが出来るほど聞かされてきた。
病院にゐるのだから、もちろんすぐに薬をもらつたが、それでも痛みは取れないし、翌日の夜になると動かさなくても痛い。枕頭の書あれこれ(漢詩から小説本まで)のページをひるがへす合間合間に、をかしな場所で痛風が出る羽目になつたとしきりに感慨にふけつた。
翌日夕方、中井修先生と話をしたが、尿酸値は入院当時にくらべると大幅に下がってゐるのださうで、それにもかかはらず痛風が出たのだから納得がゆかない、
先生は小首をかしげて、「ストレスで出るといふ説もあります。それかもしれません」と言つてから、しかし、「案外、ベッドの下にボトルが隠してあるんぢやないですか」と笑ひ捨てて出て行つた。小説家は酒に目のない連中だといふのが世の常識なのである。」p.263
読書メーター 丸谷才一の本棚(刊行年順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091201
の登録冊数は122冊です。

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